「絵日記クラブ」



 2017/03/13 「動物行動心理学」byジェレミー・スペンサー




「うちの子、言葉を話し始めたんです」
犬の散歩をしている人とは、仲良しになります。
相手も、私が科学者と知っていますから、色々と話してくれるのですね。
犬が話しをすることは、あまり知られていない事実です。
ペットの犬は、自分を人間だと思っていますから、もごもご話そうとするのですね。
けれども、それを理解しようとするのは、間違いです。
いいですか、ドリトル先生は、子供の頃のお話しです。(会場爆笑)
「奥さん、それで、どんなお話が聞けましたか」
「実は、まだよくわからなくて」彼女は答えました。
よく晴れた気持ちのいい日でしたので、我々は笑顔で別れました。
けれども皆さんは、絶対に犬が喋ることを理解してはなりません。
私は、精神科医ではなく、動物行動心理学者です。助けることができません。
違うんですね。犬は、ジェスチャーによって話します。
犬が、自分の肛門の臭いを嗅ごうとして、くるくる回るのを見たことがありますね。
我々専門家の間では、代償的補償行動と呼ばれるものです。
犬同士の挨拶を見たことがあるでしょう。肛門の臭いを嗅ぎ合います。
ところが、人間が相手だとそれができないのですね。
その為に犬は、代償行為として、自分の肛門の臭いを嗅ごうとするのです。
勇気のある人は、パンツを下げて自分の肛門を犬の前に出すかもしれません。
決してお勧めはできませんが。(会場爆笑)
その時犬は、コンニチワ、あなたと会えて嬉しい、あなたのことを知りたい、と言いたかっただけなのです。
これが動物行動心理学です。
犬の糞、または肛門には、今日我々がネットに残す痕跡と同じくらい、様々な情報が埋め込まれています。
(ここでスペンサー氏は、ミネラルウォーターを一口飲みました)
「センセ、聞いてください。うちの子、この頃、服に好みができてきたんです」
こんな相談を受けたこともありました。
色々尋ねると、マジックテープ付きの服を嫌がるということがわかってきました。
「奥さん、その服は捨てた方がいいです」
皆さん、マジックテープを自分の頭に貼り付けてみたことはありますか?
最悪の気分になることは請け合いです。犬は違うというのでしょうか。
飼い犬に初めて首輪を付けた日のことを覚えてはいませんか? 気が狂わんばかりに嫌がりませんでしたか?
首輪は仕方がありません。条例で義務付けられています。けれども、服は違うはずなんですね。
私は、怒りがこみ上げてきました。動物を虐待する人など、許せないのです。
勘違いしている人も多いのですが、犬に服は必要ありません。
犬は寒くないのですか? バカげています。
犬は普通、外で暮らし、冬の寒い朝にも耐えられるような毛皮を着て生まれてきているのです。
こうした手前勝手な擬人化を犬に押し付けることで、犬がどれほど迷惑しているか。
想像してみて下さい。犬が、それでもあなたの我がままに黙って耐える動物だということを。
ご清聴感謝します。

「ここで、スペンサー氏に対して、会場からの質問を受け付けます。どなたか、はい、そこのあなた」
「私はうちの子に服を着せているんですのよ。それがいけないとおっしゃる根拠はなんなのですか?」
「犬は、通常15年ほどの寿命があります。普通は、外で飼うものです。スヌーピーだって屋根の上で寝ていますよね? 確かに、冬には自家発熱するために、エネルギー代謝は激しくなります。けれども、そういったことも含めての寿命なのです。
いいですか、それを空調の効いた室内で飼う。エアコンの空気が悪いからと空気清浄機まで買う。あまつさえ、服まで着せる。犬の寿命をムダに引き延ばしてしまっているのです。適当に、いい加減なところで死ねなければ、どうなりますか。病気の辛い生活が人生に加算されるのです。様々な生活補助具を使わねばならないハメに陥った犬の悲惨を知っていますか」
「スペンサーさん、あなたは動物愛護の精神に欠けています。私は、愛犬には少しでも長く生きて欲しいのです」
「いいでしょう。それなら、あなたの人生を考えてみて下さい。神があなたにムダな寿命をプレゼントしたとします。あなたは生物としての寿命を終えていますので、認知症になり、目が見えなくなり、紙おむつで寝たきりになる。世話をしてくれる人がいれば、その人に散々な迷惑をかける。鼻も利かなくなりますから、ご飯の味もわからなくなります。耳も聴こえなくなります。最早すべての愉しみが、あなたの世界から消え去ります。それでも生きなければならないということは、刑罰ではないでしょうか。犬は、違いますか?」
「私はねえ、スペンサーさん・・・」

疲れてきたので、この番組は、ここで終わります。